Syntax and Semantics
Rustには強力なパターンマッチがあります。 今回はその紹介です。
Match
まずは簡単な例から。match
のsyntaxは以下のようになっています。
let x = 5;
match x {
1 => println!("one");
2 => println!("two");
3 => println!("three");
4 => println!("four");
5 => println!("five");
_ => println!("something else");
}
match
はexpressionをとり、{}
で囲んで、
val => expression
の形で枝を連ねます。
_
をつかうと、なんにでもmatchすることができます。
Haskellとおなじですね。
if-else
とちがって、
match
はすべての場合を網羅することがコンパイル時にチェックされます。
ちなみに、
match x {
_ => println!("something else");
5 => println!("five");
}
のように、_
を上に書くと、5
の枝に分岐しないよ!
というコンパイルエラーがでました。
match
自体もexpressionなので、代入できます。
let x = 5;
let number = match x {
1 => "one",
2 => "two",
3 => "three",
4 => "four",
5 => "five",
_ => "somehing else",
}
println!("x is {}", number);
Matching on enums
match
と相性がいいのがenumです。
enum Message {
Quit,
ChangeColor(i32, i32, i32),
Move { x: i32, y: i32 },
Write(String),
}
fn quit() { /* ... */ }
fn change_color(r: i32, g: i32, b: i32) { /* ... */ }
fn move_cursor(x: i32, y: i32) { /* ... */ }
fn process_message(msg: Message) {
match msg {
Message::Quit => quit(),
Message::ChangeColor(r, g, b) => change_color(r, g, b),
Message::Move { x: x, y: y } => move_cursor(x, y),
Message::Write(s) => println!("{}", s),
};
}
Enumをmatchするときも、すべての場合を網羅しているかチェックされます。
上の例のように、Matchの際にstructの中身をとりだすことができます。 このような、patternの詳細は次の章から詳しく見ていきます。
Patterns
もっとも簡単なpatternの例は最初に扱いました。 次に進みましょう。
Multiple patterns
|
をつかうと、orパターンが実現できます。
let x = 1;
match x {
1 | 2 => println!("one or two"),
3 => println!("three"),
_ => println!("anything"),
}
Destructing
Enumのmatchで扱いましたが、
struct
やenum
などの複合型をmatchするときは、
そのなかみをとりだすことができます。
struct Point {
x: i32,
y: i32,
}
let origin = Point { x: 0, y: 0 };
match origin {
Point { x, y } => println!("({},{})", x, y),
}
struct
なら、要素に別の名前をつけることもできます。
match origin {
Point { x: x1, y: y1 } => println!("({},{})", x1, y1),
}
さらに、すべての要素が必要でない問は、..
が使えます。
match origin {
Point { y, .. } => println!("y is {}", y),
}
Ignoring bindings
_
をつかえばなんにでもmatchしますが、次のようにも使えます。
match some_value {
Ok(value) => println!("got a value: {}", value),
Err(_) => println!("an error occurred"),
}
some_value
はResult<T, E>
という型で、
Ok
かErr
というenum
の可能性があります。
Err(_)
は、Err
であるという情報だけでmatchし、
中身がなんであるかは捨てています。
match
以外でも_
が使えて、たとえば、
fn coodinate() -> (i32, i32, i32) {
// generate and return some sort of triple tuple
}
let (x, _, z) = coodinate();
のように、tupleを返す関数の戻り値の一部を捨てることができます。
また、複数のものを捨てるときは、_, _
などの代わりに、..
が使えます。
enum OptionalTuple {
Value(i32, i32, i32),
Missing,
}
let x = OptionalTuple::Value(5, -2, 3);
match x {
OptionalTuple::Value(..) => println!("Got a tuple!"),
OptionalTuple::Missing => println!("No such luck."),
}
ref and ref mut
Matchしたものを参照で受け取りたいときは、ref
をつけます。
let x = 5;
match x {
ref r => println!("Got a reference to {}", r),
}
このときr
の型は&i32
になっています。
mutableな参照なら、ref mut
とします。
Ranges
整数型とchar
は、...
を使ってrangeでmatchができます。
let x = 1;
match x {
1 ... 5 => println!("one through five"),
_ => println!("anything"),
}
let x = '💅'
match x {
'a' ... 'j' => println!("early letter"),
'k' ... 'z' => println!("late letter"),
_ => println!("something else"),
}
Bindings
Matchした結果を@
をつかってbindすることができます。
let x = 1;
match x {
e @ 1 ... 5 => println!("got a range element {}", e),
_ => println!("anything"),
}
この例だと、x
を表示すればいいですが、
複雑なstruct
などにつかうと便利です。
#[derive(Debug)]
struct Person {
name: Option<String>,
}
let name = "Steve".to_string();
let mut x: Option<Person> = Some(Person { name: Some(name) });
match x {
Some(Person { name: ref a @ Some(_), .. }) => println!("{:?}", a),
_ => {}
}
a
にname
をbindしています。
@
を|
といっしょにつかうときは、
let x = 5;
match x {
e @ 1 ... 5 | e @ 8 ... 10 => println!("got a range element {}", e),
_ => println!("anything"),
}
のように、|
で区切ったすべての部分についてbindするように書きます。
Guards
Matchの条件にif
を書くことで、guardも実現できます。
enum OptionalInt {
Value(i32),
Missing,
}
let x = OptionalInt::Value(5);
match x {
OptionalInt::Value(i) if i > 5 => println!("Got an int bigger than five!"),
OptionalInt::Value(..) => println!("Got an int!"),
OptionalInt::Missing => println!("No such luck."),
}
i > 5
がfalse
なので、ひとつ目のパターンにはマッチせず、
ふたつ目に入ります。
match x {
OptionalInt::Value(i) => if i > 5 {
println!("Got an int bigger than five!");
} else {
println!("Got an int!"),
},
OptionalInt::Missing => println!("No such luck."),
}
としても同じですが、guardをつかったほうが多少わかりやすいでしょうか。
|
と組み合わせるときは、guardのif
は|
で区切ったすべての部分に掛かります。
つまり、
let x = 4;
let y = false;
match x {
4 | 5 if y => println!("yes"),
_ => println!("no"),
}
と書くと、4 | (5 if y)
ではなく、(4 | 5) if y
と解釈されます。
ちなみに、
let x = 4;
match x {
i if i % 2 == 0 => println!("even"),
4 => println!("four"),
_ => println!("something else"),
}
と書くと、最初のguardにマッチするので、4 =>
のpatternは起こりえません。
_
を最後以外に書いたときとちがって、この場合は警告も出ないようです。
最後にひとつ注意です。
let x = 'x';
let c = 'c';
match c {
x => println!("x: {}, c: {}", x, c),
}
println!("x: {}", x);
は、
x: c, c: c
x: x
を出力します。
Matchの結果をbindした変数は、
match
のスコープ内でのみ有効な、あたらしくつくられたvariable bindingです。
そのため、一行目で定義したx
は隠されることになります。
今回はパターンマッチを扱いました。 現代的な便利構文なのでぜひ実用してみたいです。